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東京高等裁判所 昭和58年(う)1356号 判決

被告人 米丸憲文 外五名

〔抄 録〕

なお、当裁判所が刑訴法三二一条一項三号書面として採用した第二機動隊第三中隊行動記録、第五機動隊第三中隊活動記録、第五機動隊第二中隊活動記録、第二機動隊警備実施記録の証拠能力について付言すると、右四通の書面の記載内容及び当審証人北村善信、同中本正己、同北沢昭雄、同高橋功、同中村英夫、同酒寄祐司、同佐伯昌彦、同三沢由之、同高木健哉、同川端勲の各証言によれば、第二機動隊第三中隊行動記録は、同中隊の記録係北村善信が、上司の命により、本件当日本件現場に出動した右第三中隊の活動状況等とその時刻を、その場でその都度時刻を確認しながら記録をして上司に提出したものの謄本であること、第五機動隊第三中隊活動記録は、作成名義人である同第三中隊長高木健哉が同中隊の記録係中本正己に作成させたものであり、右中本は、上司の命により、本件当日本件現場に出動した同中隊の活動状況等とその時刻を、その場でその都度時刻を確認しながらメモをし、その後間もなく右メモの内容をまとめ、これを同僚の北沢昭雄が浄書のうえ右中隊長に提出されたものであること、第五機動隊第二中隊活動記録は、作成名義人である同第二中隊長川端勲が同中隊の記録係高橋功に作成させたものであり、右高橋と同中隊の記録係高松国昭の両名は、いずれも、上司の命により、本件当日本件現場に出動した同中隊の活動状況等とその時刻を、その場でその都度時刻を確認しながらメモをし、右高橋がその数日後、右各メモの内容をまとめ、これを同僚の中村英夫が浄書のうえ右中隊長に提出されたものであること、第二機動隊警備実施記録は、作成名義人である第二機動隊長三沢由之が同機動隊の記録係酒寄祐司に作成させたものであり、右酒寄と同機動隊の記録係佐伯昌彦ほか二名は、いずれも、上司の命により、本件当日本件現場に出動した同機動隊の活動状況等とその時刻を、その場でその都度時刻を確認しながらメモをし、右酒寄が、当日右各メモの内容をまとめ、右佐伯ほか四名と手分けして浄書のうえ右機動隊長に提出したものであること、右四通の書面の右作成名義人及び右実質的作成者らは、いずれも、当裁判所において証人として尋問されたが、右各書面の記載内容、特に部隊の活動状況の細部にわたる時刻についての正確な記憶を喪失していること、右四通の書面のうち当裁判所が採用した部分(第二機動隊第三中隊については全部)は、すべて、その実質的作成者(右北村、中本、高橋、酒寄)において、自ら見聞した事実が記載されていることが認められる。

以上の事実に照らすと、右四通の書面は、いずれも客観性に富み、刑訴法三二一条一項三号にいう特に信用すべき情況のもとに作成されたものと認められ、また、本件においては分刻みの正確な時刻が重要であるところ、右の点についてまでの記憶はこれを喪失しており、書面の作成者がその内容につき記憶を喪失して公判期日等で供述できないときは、同条項にいう供述不能に該当すると解すべきである(最高裁判所昭和二九年七月二九日決定、刑集八巻七号一二一七頁参照。)から、右四通の書面につき、同条項にいう供述不能の場合に該当することが明らかである。

そして、本件においては、被告人らの犯行加担の時刻、被害警察官らの受傷時刻等が分刻みで争われており、特にアリバイが主張されている被告人太田、同塙の本件犯行への加担の有無、時刻を判断するためには、右各部隊の活動状況、特にその正確な時刻を明らかにすることが極めて重要であるところ、右第二機動隊第三中隊行動記録及び第五機動隊第三中隊活動記録については、被告人太田が本件犯行時に前記本館自習室にいた旨のアリバイを否定して同被告人の本件犯行を証明するために必要不可欠な証拠であり、第二機動隊警備実施記録については、被告人塙が本件犯行時に本館三〇番教室にいた旨のアリバイを否定して同被告人の本件犯行を証明するために必要不可欠な証拠であり、また、第五機動隊第二中隊活動記録については、右書面は、同中隊の警察官らが本件路地に再進入した時刻が本件当日午前五時四七分ころであることを証する唯一の確証であり、右の事実が被告人両名の本件犯行を証明するために必要不可欠な証拠であることはすでに判示したところにより明らかである。

以上のとおりであって、右四通の書面はいずれも刑訴法三二一条一項三号に該当する書面であると認める。

(佐々木 竹田 中西)

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